キリスト教の葬儀に参列するとき
お金は包んでいいの? 袋には何と書く? 「ご冥福をお祈りします」は使える? キリスト教の葬儀に参列する日の持ち物・服装・当日の流れ・かける言葉を、教派のちがいも含めて順に説明します。
訃報の知らせに「葬儀は◯◯教会で行います」とあって、手が止まった方も多いと思います。お金は包んでいいのか、袋には何と書くのか、数珠は持っていくのか。そして、ご遺族に何と声をかければいいのか。仏式とは勝手が違うので、迷って当然です。
このページは、訃報を受けたその日に確かめたい順番に並べました。上から順に見ていけば、当日の見当はつくはずです。
まずはこれだけ
- お金は包んでかまいません。表書きは御花料がいちばん広く使えます
- 蓮の絵が入った袋は使いません。白無地か、十字架やユリの絵のものを選びます
- 服装は仏式と同じ喪服でかまいません。数珠は持っていきません
- 「ご冥福」「成仏」「供養」「往生」は仏教の言葉です。別の言い方に置きかえます
- 焼香ではなく献花をします。やり方はたいてい当日に案内があります
何を包むか:金額の目安と表書き
キリスト教の葬儀でも、仏式の香典にあたるお金を包むのが一般的です。ただし「香典」という言葉自体が仏教のものなので、表書きには使いません。
金額は、葬儀社が案内している一般的な相場が下の範囲です。キリスト教の教えが額を定めているわけではなく、地域や関係の深さで幅があります。仏式のときと同じ感覚で決めて差し支えありません。
| 故人との関係 | よく案内される目安 |
|---|---|
| 友人・知人・職場の関係 | 5,000〜10,000円 |
| 親族(おじ・おばなど) | 10,000〜30,000円 |
| 親族(親・きょうだいなど近い関係) | 30,000〜100,000円 |
新札を避ける、といった細かい作法は日本の弔事の慣習であって、キリスト教の教えに由来するものではありません。気になる場合は一般的な弔事にならえば十分です。
なお、訃報や案内状に「御花料はご辞退申し上げます」とある場合は、そのまま従ってください。用意して持参し、受付で押し返される形になるほうが、ご遺族の負担になります。
表書きは教派で言い方が違います
ここがいちばん間違えやすいところです。同じキリスト教でも、よく使われる言葉が教派で違います。
| 教派 | 使われる表書き | 補足 |
|---|---|---|
| カトリック | 御花料/御ミサ料 | 「御ミサ料」はカトリックで使われる言い方です |
| プロテスタント | 御花料/献花料/忌慰料 | 「献花料」「忌慰料」もよく使われます |
| 聖公会 | 御花料 | 白無地の封筒が広く使われます |
| 正教会 | 御花料 | 白無地の封筒が広く使われます |
| 教派が分からないとき | 御花料 | どの教派でも通じます |
迷ったら御花料と書いてください。これで失礼になることはまずありません。教派が分からないまま「御ミサ料」と書くと、プロテスタントの葬儀では合わない言葉になります。
「御霊前」については、教派で考え方が分かれます。カトリックの葬儀で使われることもある一方、プロテスタントでは、故人の霊に対して何かを供えるという発想をとらない立場から使わない、という説明のされ方が一般的です。どちらが正しいと決められる話ではありませんので、迷ったときは御花料にしておくのが穏当です。
袋そのものにも注意してください。蓮の花が描かれた袋は仏教のものです。白無地の封筒か、十字架やユリの絵が入ったものを選びます。水引はないものが基本ですが、地域によっては黒白の水引を用いることもあります。キリスト教書店や大きな文具店で扱っています。
カトリックとプロテスタントの違いそのものが分からないという方は、カトリックとプロテスタントのちがいもあわせてご覧ください。
服装と持ち物:数珠はいりません
服装は、仏式の葬儀と同じ喪服で問題ありません。男性は黒のスーツに黒のネクタイ、女性は黒のワンピースやスーツ。光る装飾は控えます。
持ち物で違うのは、数珠は持っていきませんという点です。数珠は仏教の用具なので、キリスト教の葬儀では使いません。喪章も、遺族側で用意がなければ気にしなくて大丈夫です。
ロザリオ(カトリックで祈りに使う数珠状のもの)も、信者でない方が用意する必要はありません。持っていなくてまったく問題ありません。
教会の建物に入ること自体がはじめてで不安な方は、はじめて教会に行く日の流れに建物の入り方や振る舞いをまとめてあります。
当日の流れ:前の晩の集まりと、翌日の式
日本のキリスト教の葬儀は、前の晩の集まりと、翌日の式の二日に分けて行われることが多くあります。呼び方は教派で違います。
| カトリック | プロテスタント | 聖公会 | 正教会 | |
|---|---|---|---|---|
| 亡くなることの言い方 | 帰天 | 召天 | 逝去 | 永眠 |
| 前の晩の集まり | 通夜の祈り | 前夜式 | 通夜の祈り | 通夜のパニヒダ |
| 葬儀当日の式 | 葬儀ミサ | 葬儀式 | 葬送式 | 埋葬式 |
これはよく使われる言い方の一例です。同じ教派でも教会によって呼び方は変わります。とくにプロテスタントは教団・教会による幅が大きいので、案内状に書かれている呼び方に合わせてください。
日本では、前の晩に集まる形が仏式の通夜に合わせて広まった面があります。日本では、前の晩に集まる形が仏式の通夜に合わせて広まった面が大きく、プロテスタントの前夜式や、日本聖公会の通夜の祈りは、日本の葬送習慣に合わせて設けられたものです。中身は仏式の通夜とは別で、聖書朗読と賛美歌、遺族を慰める祈りが中心になります。一方、埋葬式の前晩に行う正教会のパニヒダは、日本の習慣に合わせて置かれたものではなく、正教会に古くからある永眠者のための祈りです。カトリックの通夜の祈りも、葬儀に先立つ祈りとして儀式書に定められています。正教会のパニヒダも、正教会に固有の祈りです。仏式の代わりに置かれたものではありません。
参列者としてすることは、どちらの日もおおむね同じです。席に着き、聖書が朗読され、賛美歌(教派によっては聖歌)が歌われ、牧師・司祭(神父)の話があり、祈りがあります。歌えなくても、歌詞を目で追っているだけでかまいません。式の時間は30分から1時間ほどのことが多く、教派や式によってはもう少し長くなります。
立ったり座ったりを繰り返す式もあります。周りに合わせられなくても問題ありません。体調がすぐれないとき、足腰がつらいとき、車いすを使っているときは、座ったままで最後までいてかまいません。途中で席を外すことも、とがめられることではありません。
カトリックの葬儀ミサには、中心となる部分として聖体拝領があります。聖公会の葬送式でも聖餐(陪餐)が行われることがありますし、正教会でも埋葬式にあわせて聖体礼儀が行われることがあります。だれがあずかるかについては、教派や教会で考え方が違います。参列者が席に座ったままでいることはごく自然なことですので、列に並ばなくてもまったく問題ありません。ほかの教派で洗礼を受けている方も、その教会の考え方によって案内が変わりますので、迷うときは座っていて差し支えありません。カトリックの教会では、聖体は受けずに祝福だけを受けるために列に並んでください、と案内されることもあります。いずれも、その場の案内に従えば大丈夫です。
献花のしかた
仏式の焼香にあたる場面で、キリスト教の葬儀ではお別れのしるしとして一人ずつ花を捧げることが多くあります。順番が来たら、係の方から白い花を一本渡されます。
ただし、この場面の作法は教派や教会によって違います。カトリックの教会では焼香が案内されることがありますし、正教会では十字架やイコンに接吻する形でお別れをすることもあります。どの場合も当日に案内がありますので、それに従えば大丈夫です。
- 花が右、茎が左になるように、両手で受け取ります
- 献花台の前まで進み、祭壇に向かって一礼します
- 花を時計回りに回し、茎が祭壇側に向くように持ちかえて、台に置きます
- 手を合わせるのではなく、黙祷するか深く一礼します
- 二、三歩下がり、ご遺族に一礼して席に戻ります
花の向きについては、花のほうを祭壇側に向けて置くよう案内される場合もあります。教会や式によって流儀が違いますので、係の方の案内や、自分の前の人のやり方に合わせれば十分です。所作の細部が多少違っても、問題になることはまずありません。
立って進むのがつらいとき、車いすを使っているとき、手がふさがっているときは、無理をなさらないでください。席に座ったまま黙祷するだけでも、お別れの気持ちは十分に伝わります。係の方に一言伝えれば、花を代わりに置いてもらえたり、席まで持ってきてもらえたりすることもあります。一礼も、深く頭を下げるのが難しければ会釈で差し支えありません。
かける言葉:「ご冥福をお祈りします」は使いません
これがいちばん気を遣うところだと思います。ふだん口にする弔いの言葉の多くは、もともと仏教の言葉です。
| 避けたい言葉 | 理由 | 置きかえの例 |
|---|---|---|
| ご冥福をお祈りします | 「冥福」は仏教の来世観から出た言葉 | 心よりお悔やみ申し上げます/ご遺族の上に慰めがありますようお祈りいたします |
| ご成仏をお祈りします | 「成仏」は仏教の考え方 | 安らかなお眠りをお祈りいたします |
| ご供養 | 仏教の言葉 | (使わず、ご遺族を気づかう言葉に置きかえます) |
| 往生 | 仏教の言葉 | (同上) |
亡くなった方のために祈るという言い方をするかどうかは、教派で考え方が分かれるところです。迷うときは、ご遺族の慰めを願う形にしておくと、どの教派の葬儀でも角が立ちません。
「お悔やみ申し上げます」は仏教の言葉ではありませんが、「悔やむ」という言い方が、死を神のもとに召されることと受けとめるキリスト教の考え方になじまないとして、避けるように案内している教会や葬儀社もあります。実際には広く使われている言葉なので、使ってしまっても責められるようなものではありません。迷うときは「ご遺族の上に慰めがありますようお祈りいたします」「安らかなお眠りをお祈りいたします」にしておくと確実です。悲しみを言葉にすること自体が慎まれるわけではありませんので、悲しいと書いて差し支えありません。この受けとめ方の背景はキリスト教とは何かで触れています。
メールで送るとき
◯◯さんの訃報に接し、言葉が見つかりません。ご遺族の上に慰めがありますよう、心よりお祈りいたします。ご返信はどうぞお気になさらないでください。
◯◯様のご逝去を伺いました。安らかなお眠りをお祈りいたします。
LINEなど、短い文で送るとき
突然のことで、かける言葉が見つかりません。今は無理をしないでください。私にできることがあれば、いつでも言ってください。
知らせをありがとう。落ち着いたら連絡をください。
弔電を打つとき
◯◯様のご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。ご遺族の上に慰めと平安がありますようお祈り申し上げます。
◯◯様の安らかなお眠りをお祈りし、謹んで哀悼の意を表します。
言葉選びに正解はありません。定型句を無理に整えるより、「言葉が見つかりません」と正直に書くほうが伝わることもあります。
葬儀のあと:返礼と、故人を覚える日
キリスト教にもともと香典返しの習慣があったわけではありません。ただし日本では、いただいた御花料に返礼をすることが広く行われています。時期は次のように案内されることが多いところです。
- カトリック:亡くなって30日目ごろの追悼ミサのあと
- プロテスタント:1か月後の召天記念日のあと
聖公会にも、逝去者記念式・逝去者記念聖餐式(レクイエム)と呼ばれる礼拝があります。正教会では、永眠から三日目・九日目・四十日目にパニヒダを行い、その後は毎年の永眠日に祈るという古くからの定めがあり、日取りを教会ごとに決めるわけではありません。返礼をいつ用意するかについては、その教会に確認するのが確実です。返礼の掛け紙の表書きには「志」や「偲び草」が使われます。
そのあとも、毎年の記念日に記念式や追悼ミサを行う教会があります。11月に亡くなった人たちを覚える礼拝を持つ教会もあります。教会の一年の流れについては教会暦にまとめてあります。
いずれも「何年目に必ず行う」という決まりがあるわけではなく、教会と家族で決めていく部分が大きいところです。気になることは、その教会に直接聞くのがいちばん確実です。
教会で葬儀をお願いしたいとき
ご家族が亡くなり、教会での葬儀を考えている場合は、まず故人とつながりのあった教会に連絡してください。心当たりがなければ、地域の教会に電話で相談するところから始まります。電話口で「葬儀のことでご相談したいのですが」と伝えれば話が通じます。
教会での葬儀は、その教会に連なる方のための礼拝として営まれるという考え方があり、故人と教会とのつながりがない場合は、お引き受けが難しいこともあります。一方で、事情を聞いたうえで引き受けている教会もあります。方針は教会によって違いますので、まずは遠慮なく事情を話してみてください。難しかった場合は、キリスト教式の葬儀を扱う葬儀社に相談する、あるいは近隣の別の教会にあたるという道があります。
東京都内の教会をさがすでは、市区町村や最寄り駅から教会を探せます。電話番号を掲載している教会は、そこから直接ご連絡いただけます。
次に読むなら
- カトリックとプロテスタントのちがい — 表書きや呼び方が分かれる背景を知りたい方へ
- はじめて教会に行く日の流れ — 教会の建物に入ること自体がはじめての方へ
- キリスト教とは何か — 死をどう受けとめる宗教なのかを知りたい方へ